菊池麦彦さんの制作場に行ってきました
場所は埼玉県岩槻市の自宅兼アトリエです。
工房は茨城県と埼玉県の2箇所にあるのですが、さいたまの方のアトリエに伺ってきました。
ご自宅も新築されたばかりでとても綺麗でした。
今回は菊池さんが漆器の製作をしている作業場を見せていただきました。
作業用のデスク
こちらは作業用デスクです。
漆器の製作には細かい作業も多く、つくえの上には自分には馴染みのない道具が並んでしました。
漆器制作に欠かせない道具たち
珍しい道具をたくさん見せてもらいました。
左から時計回りで、塗師刀、木材を削るための刃、漆刷毛、研磨用の炭になります。
"塗師刀(ぬしとう)"は漆を塗るヘラを作るための道具だそうです。
漆塗りで使うヘラは、その用途に応じて材質や形状を変える必要があります。
そのため、塗師刀というこの専用の小刀で木を薄く削り、形を整えます。
塗師刀を手入れすることも大事な日課だそうで、よく手入れされてとても切れ味が良さそうでした。
"漆刷毛(うるしばけ)"は、制作の後半で何度も手作業で塗り重ねていく際の道具です。
なんと、素材には人間の毛髪が使われているそうです。
漆室(うるしむろ)
不思議なことに、漆を乾燥させるには適度な湿度が必要だそうです。
菊池さんのアトリエにも木でできた大きな室(むろ)と呼ばれる湿度を保つための棚がありました。
この湿度を保つという事が、漆器作りには大事なのですが、とても神経を使い、難しいのだそうです。
中には乾燥中の作品や、菊池さんの生徒さんの作品が入っていました。
変り塗りの茶杓
漆を何層にも重ねて研磨し色を出す、菊池さんが得意な変り塗りという技法を用いて作られた茶杓です。
漆は朱や黒のイメージが強いですが、こういったカラフルな物があることには驚きます。
この茶杓は、陶芸家である菊池さんの奥さんが色を決めてのオーダーした物です。
装飾に使う粉筒(ふんづつ)
粉筒とは、漆器の表面に貝殻や金粉などで装飾をする際に使う道具です。
今まではアシを原料とした粉筒が普通でしたが、今はアルミや竹のものが増えていて、アシでできたものは貴重になってしまったそうです。
金継ぎで修復されたカップ
大事なお皿が割れた時に、それを直す方法として漆で接着する金継ぎという技法があります。
このカップは菊池さんが金継ぎで修復した物です。
通常は割れ目の上から金を蒔くことが多いそうなのですが、これは共繕い(ともつくろい)という技法でシンプルに仕上げています。
金継ぎは時に割れる前の状態よりより良くなることもあります。
表面を触らせてもらったのですが、全く凹凸を感じずプロの技に感動しました。
アトリエにお伺いしてきて
漆器作りには専用の道具や長い工程が必要で、時間と手間がかかるという事、またその上で良い品物ができるということが実感できました。
また、金継ぎという技法で大切だった器などが新たな表情を持って修復されるということにも感動しました。
麦工房さんでは金継ぎの依頼も承っているので、お気に入りの器が割れてしまった場合、捨てずに一度問合せてみるのもいいかと思います。
自分で直してみたいという方は、菊池さんは金継ぎ教室もされているので、習いに行ってそのお気に入りの器を自分で直してみるのもいいかもしれませアトリエにお伺いしてきてんね。