机上工芸舎さんのアトリエにお伺いしてきました
今回は、千葉県船橋市で金工作家の湯浅記央さんと、陶芸作家の星野友里さんが共同経営されている机上工芸舎さんのアトリエにお伺いした時の話です。
最寄りの東船橋駅から徒歩で15分ほど。近くまで行くと、川沿いに『机上工芸舎』と記された、星野さんのデザインした小さな看板があります。
(上の画像のものとはまた別です)
もともとは湯浅さんのお祖母様が住んでいらしたというお家を改装して、自宅兼アトリエとして運営されています。
お二人いわく、とても古くて改装も一苦労でした。
ということだったのですが、お二人のセンスを感じる気持ちのよい内装と、閑静な佇まいについのんびりとさせていただきました。
はじめは雑談をしつつ…お菓子とコーヒーをいただきました
最初に大きな木のテーブルが置かれているお部屋に通していただきました。こちらで教室などもされているそうです。
学校の図工室のような空間だったのですが、よくみると床の間の跡が! 改装した時の話も色々と聞きつつ、お茶をご馳走になりました。
星野さん作のマグカップと白いお皿に、湯浅さん作のカットフォークでお菓子をぱくり。
画像の不思議なカタチのマグカップ。片手で取手を、もう片手をカップに添えると、これがすごく良い具合。
カットフォークは、お菓子をいつもより切りたくなります。
お家を見せていただいて少し意外だったのが、置かれている家具のほとんどが木製の古道具だったことです。
また、湯浅さんは子供の頃から金属が好きだったそうで、どこからか金属を拾ったりしてきては、
「ビカビカにしてました(笑)」
とのこと。
金属が好きという事と、木でできた古道具が好きということ。一見矛盾するような、けれどどこか繋がるような、道具を見ながら一緒に思案する時間はなんだか落ち着くものでした。
工房には道具がたくさん
湯浅さんが普段、制作をされている工房を見学させてもらいました。
入ってまず目につくのが、壁一面にある金槌や木槌です。このたくさんの道具を使い分けて作品をつくられているそうです。
槌の形ででき上がる作品の表情も異なるものになります。
当て金(あてがね)
制作にあたり、金属を叩いて加工(鍛金)していくわけですが、この当て金に金属を文字通り当てて、求める曲線になるよう加工します。
ちなみに、この当て金。購入しようとするとかなり値が張るらしく、自身でつくってしまう方が多いそう。湯浅さんも学生の頃、自分で作ったそうです。
用途別に、さまざまな種類の当て金があります。
星野さんが使用しているガス窯
星野さんが制作に使用しているガス窯です。
今のアトリエに引っ越してきて間もなく友人等の助けを借りて運んできたそうで、相当に大変だったそう。
部屋がいっぱいになる大きさです。
窯の中は…
中を見せてもらいました。なんとなく内装が可愛らしく、
「星野さんの作品がここでできてるって感じがしますね」
と言ったら、そうですか?(笑)と、少し困惑気味でした(汗)
アトリエへ
木の看板は、もちろん星野さんのデザイン。
アトリエは、陽の光がたくさん入ります
アトリエにおじゃまさせてもらいました。
話しをしていたら、あっという間に夕方になってしまっていたんですが、それでもアトリエには窓が多く、十分に陽の光が入ります。
作品にストーリーを
星野さんは、以前は絵を描かれていて、その描いた絵を陶器としてカタチにしているモノもあるそう。
“絵も陶器も、その対象は、時間の流れ、それぞれのストーリーを経て生まれている。”
“その前後関係を感じることができるような作品を作りたい。”
そのようなことを話してくれました。
緊張感を持って制作に望む
“自分のやりたいことと、お客さまに使ってもらうこと。その2つの間に生まれる緊張感が重要なのかなと思っています”
と、話をされていたことです。この言葉に関しては、自分がトンチンカンな解釈をしている気がするので私見は述べられないですが、すごく心に残りました。
お取り扱いさせていただいている、はしごの花器。
並ぶと、また綺麗です。
湯浅さんの作品と、星野さんの作品が同じ空間に並ぶと
お互いほぼ別々で作業をされているらしいのですが、カタチや色が似ているということではなく、もっと根本的なところで親和性のようなものを感じました。
アトリエにお伺いしてきて
色々な話をしてもらい、また聞いてもらい、お忙しい中で多くの時間を割いていただいて本当に感謝でした。
哲学。というと大げさな気もしますが、モノをつくる。ということは、哲学のようでいて信念のようでもある。その何かがとても大切なのかもしれないな。と改めて思いました。
机上工芸舎さんの作品は、ご本人たちの人柄がとても良く表れているような気がしたからです。
おまけ
帰りがけに、不思議な石だな…と思って聞いてみると、これも星野さんが制作されたモノとのことでした。